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シムックス株式会社 中島社長インタビュー 工場でのIT化の取り組みによる生産性の向上とワークスタイル変革について

シムックス株式会社 中島社長インタビュー 工場でのIT化の取り組みによる生産性の向上とワークスタイル変革について

はじめに

今回はシムックス株式会社(http://www.cimx.co.jp/)は工場向けの管理システムや見える化システムの提供や、エネルギーマネジメントなどについてのコンサルティングなどを行っています。また、IEEE1888をはじめとするGUTPの活動にも大きくコミットされています。今回は、「エネルギーの地平変える50人」(環境新聞社)にも選ばれたシムックスの中島社長に、プロジェクトにおける「見える化」のご経験とビルのスマート化、スマートシティへの期待などについて語っていただきました。

工場のIT化の取り組みについて

私は金型工場の二代目として、30歳で工場を継ぎました。工場を継いだ頃はちょうど工場のIT化(CIM : Computer Integrated Manufacturing)が騒がれていた時期です(1980年代)。
幼いころからモノづくりと生活が一体化していて、創造的なことが好きだったこともあり、自前で工場のIT化の取り組みを進めることにしました。その時にできたのが「NC LINKS」という製品です。

NC LINKSは、CAD/CAMとNC工作機械をネットワークでつないで、自動化を実現するシステムです。NC LINKSによって、工員がいる日中しか動かせなかったNC工作機械の夜間無人連続運転が可能になりました。また、ネットワークのノイズ対策なども行うことで、品質向上も実現しました。同様の機能の製品は、他にもありましたが、基本的には同じ会社の製品しか繋がらないという課題がありました。我々は様々な製品のプロトコルを解析し、マルチベンダー化を実現したのです。当時、そうしたシステムを自前の工場で実現している例はなかったので、NC LINKSは爆発的に広がっていきました。現在も自動車、電機メーカーなど、多くの工場でご利用いただいています。

 また、当時生産管理システムはMRP(Material Requirements Planning)が主流であり、金型のような一品受注型の生産管理システムはほとんどありませんでした。そこで、日本IBMの基礎研究所と連携して、金型向けの一品受注生産管理システム「カサブランカ」という製品を作りました。皆さんが毎日使っている硬貨の元になる金型生産現場や大きな橋梁などの製作などにも利用されています。

シムックス中島社長

工場での見える化の取り組み

平成13年に始まったNEDOの「デジタルマイスタープロジェクト」に参画しました。職人の技を見える化し、それを後世に残すというプロジェクトです。我々は、金型工場における職人の暗黙知をセンサによって見える化し、形式知とすることを考えました。そのセンサの一つが電力計です。

我々は、稼働する機械にはすべて電力計を取り付けました。実際には電力計だけではなく、ビデオも含めた様々なセンサを使って職人の動きの分析を行っています。よく知られているように、電力と機械に動作には相関性がありますが、実際には機械を使っている人の動きにも相関性があります。我々は、これを非常に細かい周期で取得、分析しました。

このように情報を細かく見える化すると、職人の動作、課題点が抽出されます。さらに、種々の制約要件を鑑みると、業務の最適化を図ることができます。このノウハウを活かして作られたのが「ESP Dragon」です。なお、これらのノウハウは米国、日本で特許になっています。

日本ではトヨタ自動車に代表されるカイゼンが盛んですが、一定のカテゴリの人間しか対象としていないことに問題があると考えています。我々の方法は、科学的にカイゼンができることが特徴です。

工場以外での見える化の取り組み

工場で得られたノウハウは、他の生産現場でも活かすことができるという仮説がありました。それは「見えないエネルギーのムダと、使われない情報を組み合わせると生産効率が上がる」ということであり、「活動の無駄はエネルギーの無駄である」ということです。我々は、この仮説を、ニューヨーク州エネルギー開発局(NYSERDA)の「NEW York Energy Smartプログラム」で実証しました。

実証は、アメリカのレストランチェーン(Wendy’s)で行いました。インターネットを使って、10店舗くらいで実施し、1つの店に70個程度のセンサを設置しています。結果として、仮説は実証されたと言えます。工場の場合と同様に、エネルギーの無駄が見える化され、活動の無駄が浮き彫りになったのです。この取り組みによって、1店舗あたり15%程度の電力削減に成功しました。

店舗においては、生産の目的ははっきりしています。そのため、生産に対するエネルギー投入量と活動(アクティビティ)を分析すると、準備時間などといったアクティビティの最適化が図れます。

オフィスへの見える化の適用について

オフィスにおいては、先に述べた電力(エネルギー)の見える化に加えて、業務カレンダー、気温や天気などの情報と組み合わせると、ワークシフトによる電力のピークシフトなど、新たな付加価値の提供が実現できると考えています。

これは、我々が工場でフレックスタイムを導入した経験から述べています。適正な時間に人員を配置することで、省エネの実現と生産性が向上するだけでなく、ワーカーの満足度も向上させることができました。

たとえば、既往の工場では管理できないから朝礼を行います。我々の工場では全てのアクティビティを見える化していたので、朝礼が不要になりました。必要な時間だけ出勤していればいいので、省エネに加えて、効率とモチベーションの向上にもつながりました。

他にも、「打合せの見える化」によって、ムダな時間を取られなくなり、結果として生産性が向上します。打合せの見える化とは、「議論」「伝達」「解読」などの目的別に打合せを分けることです。対価を期待するから打合せがあります。そのため、指示が悪い場合に、伝達方法を変えると打合せが不要になることもあります。

また、当初2時間かかっていた工程会議を、「議論」ではなく「伝達」の場として、会議室の椅子は撤去し、机を高くしたことで、15分で終わるようになりました。これも見える化によって、すべてのアクティビティを把握していたから可能だったことです。

ただし、これらの取り組みは、ワーカーに得になることを前提にないとうまくいきません。生産性が上がり、遅い出社や早く帰ることができて労働時間の短縮につながり、ワーカーもハッピーになる、といったことです。

オフィスワーカーに期待すること

ワーカーは価値創造が仕事です。会社としては、ワーカーは価値を出してくれていれば良いのです。ただし、その中でワーカーが何を求めているかは重要だと思います。オフィスは箱としてだけではなく、文化(組織)としての側面がある。その中でワーカーに求めるべき価値を明確にして、最適化を行う必要があるでしょう。たとえば、少子化やダイバーシティに対応するオフィスなどです。日本の働き方は米国に比べて効率が悪いといえますが、それは文化的な側面が大きいと考えています。日本のオフィスはまだまだ歴史が浅いので、習慣や文化の見直しによって効率化が図れると考えます。

ICTの利活用について

ICTを利用することで、ワークスタイルにバリエーションが産まれて、それらのマネジメントも可能になるはずですが、まだ十分に活用されていないように感じます。たとえば、会社に遅くまで残ることが好きな人を、警備員の代わりにセキュリティゲートに配置するなど、ワーカーを最適な時間や場所に配置することで効率化を実現できるかもしれません。

IEEE1888について

IEEE1888は、施設管理者しか見ていなかったエネルギー情報を、リアルタイムに生活者(ワーカー)にまで広げたことに価値があると考えています。ターゲットユーザー層が変わることで、仕組みが変化します。変化することで、ユーザーがそれぞれに改善活動を行うことが可能になり、選択肢が広がります。

たとえば、私は日本の照明は過剰であると考えています。オフィスなどの照度計測をアメリカで行ったことがありますが、そこはもっと暗い。ユーザーが個別に照明制御を行えるようにすることで、快適性の向上、省エネなどの効果が期待できるでしょう。

実際に工場で照度を低くしてみたら、暑くならず、目が疲れないといった効果もありました。オフィスビルにおいては、そうしたトライアンドエラーができる環境であることが望ましいと考えます。

また、IEEE1888のような共通プロトコルが有効であるのは、それによって合意形成が容易になるためです。こうした取り組みは、スマート化の推進には必須と考えます。しかしながら、共通プロトコルがあったとしても、現場での擦り合わせがうまくいくわけではありません。各ベンダーをインテグレートする役割が必要で、日本において、それはゼネコンが行うべきではないかと考えています。

スマートシティについて

スマートシティやスマートコミュニティの実現には、エネルギーも含めたインフラとしてのセンシング環境が必要と考えています。それによって、街のアクティビティの見える化が実現でき、エネルギー融通などの制御も可能になるとともに、ワーカーをオフィスや工場からの解放することができると考えています。

センサ情報として有用なのは、車の移動状況や、オフィス、工場などの在館人数やそれぞれのフロアの在席数などです。人の移動状況やアクティビティはエネルギーの利用と直結しているからです。そうした情報がリアルタイムに計測され見える化できると、エネルギーを融通するための制御が可能になります。

融通のためにワーカーのアクティビティの最適化を図るので、勤務時間や勤務場所も適正化されます。ワーカーはオフィスに拘束される時間が最小化され、更なる価値づくりに専念できるための環境が整うと考えています。

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所感

オフィスにおける「見える化」はフロアの使用電力量や、定性的な観察調査などによるものが多く、シムックス社が行っているような「徹底的な見える化」という領域まで辿り着けていないのが実情だと思います。見えないエネルギーとアクティビティを結びつけること、ワーカーの価値創造のための最適化、それらが広がることでのオフィスからの解放、というのはとてもユニークかつ、重要な視点だと思いました。